第2章 水神姫
珍しく任務以外で、
昼間に火影に呼び出されたマイは
いつものように口布をして、
黒のタンクトップに、細身の黒いパンツ
というシンプルな格好で
火影室へと向かった。
忍であることは
伏せて生活している為、瞬身は使わず
歩いて向かう。
火影室へと続く廊下を歩いていると、
達筆で書かれた、それは見事な掛け軸に、
堂々と上から塗り潰すような落書きをする
金髪の少年に出くわした。
「よ~し!!!
俺ってば芸術的な才能もあるなんて
天才だってばよ♪」
壁に飾られた掛け軸の前で
ウンウンと腕を組ながら得意気な少年が
以前、火影から聞いていた少年ではないかと、
興味をもったマイは
ゆっくりと近づき声をかけた。
『なかなかですけど…これは
怒られてしまうかもしれません♪』
突然現れた気配に
驚いた少年は、マイから後ずさるように距離をとり、マイを見つめていた。
『あ…ごめんなさい。
驚かせてしまいましたね。
あんまり楽しそうにしていたので、
つい、声をかけてしまいました。』
そう告げて、首をかしげ微笑むマイに、
口布はしているものの、綺麗な容姿であることが容易に分かった少年は顔を赤らめ、驚きの表情を見せた。
『あ、ごめんなさい。
自己紹介しなきゃね。
私はかわのマイ。
年は20歳。
趣味は…』
と、続けるマイに
「お、お…」
と、どもる少年。
ん? と、優しく微笑みかけ、
同じ目線になるようにその場にしゃがみこむと、
少年は更に驚いたようで、拳を握りしめ
一気に口を開いた。
「お、怒らねぇのか!?
それに…俺に笑いかけるなんて
姉ちゃんは…俺が嫌じゃないのか!?」