第11章 親心と男心
その後は仕事など到底手につかず、気づくと終業時刻になっていた。
買い物するのも忘れ、マイはナルトのアパートへと足を進める。
「よっ!お疲れさま~」
こう言うときに限って、何故こんなにも会いたくない男に会うのだろうかと、マイは空を見上げ、薄ら笑いしているであろう神に舌打ちする。
『カカシこそ…お疲れ様。あれ?ナルトは?』
なるべく平静を装い会話に答える。
「あ…なんか一楽行くってさ。だから夕飯はいらないみたいよ?」
『あ、そうなんだ…。伝言役ご苦労様です』
「ちょ、なんかそれ刺な~い?」
クスクスと笑うマイ。
ふと、懐かしい思いに胸が熱くなる。
こんな風に昔のように、また笑い合える日がきたのだと。
それだけで十分ではないか。
男女の中では得られない、仲間の絆を、取り戻せたのだから。
再び頭を掠める、カカシと女の映像…。
こんな私を好きになってくれたイルカに
向き合ってみるのも悪くないかもしれない…マイは考えていた。
忘れる為に…利用するの…?
カカシを…忘れる為に…
会話が途切れ、カカシを見つめるマイを不信に思いつつ、思い当たる一つの事を投げ掛けた。
「イルカ先生と…何かあった?」
佇む二人を夕焼けが照らしていた。