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゛裏柱゛稽古編

第1章 裏柱


藤の花棚からは紫色の花弁が垂れ下がり、まさに藤は満開の季節を迎えていた。

――鬼の討伐隊。鬼殺隊の頭領屋敷『産屋敷邸』

その中のひとつの座敷に、布団の中から上半身を起こし、静かに座って、来客を出迎える頭領
――通称『御館様』と呼ばれる産屋敷耀哉が、 紫がかった髪を頭上高くひとつに結い上げ、星の簪を挿した女性と、サラサラした透けるような茶色い髪をした隊服を軍装に改造して身に纏う女性二人を、ほほ笑みを浮かべながら静かな眼差しで、見据えていた。
紫がかった髪の女性は足は崩しているものの、手を畳につけ、上体を畳と並行するように曲げて折々目正しく礼の形を取っていた。
茶色い髪の女性も正座をし、同じように両手をついて、耀哉に対してうやうやしく礼の形をとっていた。
紫がかった髪の女性が恭しく口を開いた。

「久方ぶりにてもうしわけございません。 お呼び立てと伺い、斎木、笹目両名、御館様におかれましては、本日もご機嫌麗しく、拝謁が叶ったこと感謝致します。」

2人の女性は更に深く頭を垂れた。 もう光を映さない、耀哉の盲目の瞳は優しく緩むように2人をまるで見えているかのように見つめて優しく語りかけた。

「顔を上げて2人とも。」

耀哉の許しを得て2人は上体を起こし、背を伸ばす。 お互い特徴の違った美しく整った横顔。 落ち着いた雰囲気の独特な雰囲気を纏った、成熟した女性らしい横顔の斎木璃玖。
まるで美しい少年のようなキリッとした目つきが印象深い、しかしそれだけではない女性らしさも併せ持つ、こちらも独特な女性美を放つ容貌をしている笹目恵。
2人は真っ直ぐな瞳で、病で視力を失い、顔の容貌が変わって来ていてなお、魅力を無くさない不思議な美しさを備えた耀哉の、顔に浮かぶ笑みを見つめ返した。
続けて耀哉は口を穏やかな口調で言葉を紡ぐ 。

「まずは2人とも、『隠し』の育成に尽力を尽くしてくれて、感謝しているよ。時に英美子は体の調子はどうだい?」

英美子と呼ばれた、斎木璃玖は、うやうやしく口を開いた。

「は。ご心配痛み入ります。胡蝶どののおかげか、薬のせいで進行が止まり、『鬼もどき』ではございますが、何とか人として生活を送ることができております。ただ、足はこれ以上の回復は見れないとの事。足が木偶同然にて無作法な姿を御館様にお見せする無礼をお許しください」
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