第4章 近づいて
奥の方で音がしたが特に何も起こらない。
さやかは暗く全て把握しきれないこの空間が怖くなったようだ。
「先生っ!すみません、っ!」
さやかはそう呟くとふたりの距離を全て縮め、義勇の横にぴたりとくっついて座った。
そして、きゅっと自分のスカートの裾を握りしめて体育座りの膝に顔を埋めた。
「あの…ちょっと色々起こりすぎちゃって、私、あんまりよくわかんないです。先生…すみません、とりあえず怖くて、少しこうさせててください。」
「大丈夫だ。俺がいるから安心しろ。」
義勇はとうとう座ったままのさやかを抱きしめた。
柔らかく小さなさやかはやっぱり耳まで赤くなっていて顔をあげてはくれなかった。
抱きしめたまま髪を撫でる。細い髪が義勇の指の間を通って溢れる。
ポニーテールの束に顔を近づけると、ふわりと金木犀の香りがした。
下半身が疼いてきて、義勇はまた内心で焦りを感じた。なんとかバレないように腰を少し引く。
頭と背中を撫でながら、義勇はさやかを近くに感じる幸せに浸っていた。
しばらくすると規則正しい寝息が聞こえ始め、義勇はまたそっと横に寄り添うと、今度こそ手を取って目を閉じた。