第3章 予感
天元には前世の記憶がある。しかも鮮明に。
これが前世だと気がついたのは、知らないはずの人たちのことを何故だかよく知っていたからだ。
天元の前世での出会いは今世でも似通っていた。
不死川や冨岡など、柱として共闘した者たち、鬼殺隊士として支え合った仲間たち、鬼となり命を取り合った者たち─────
花凪野さやかもそのうちのひとりだった。本人に記憶がなかったとしても、顔立ち、立ち振る舞い、声、話し方はそのままだった。
─────そして彼女は水柱である冨岡の、恋人だった。
それにしても不死川の朝の発言に気になるところがあったのを思い出した。
「宇髄ィ……鬼って嫌がると思うかァ?」
鬼なんざいるはずねぇだろ、と答えたいところだがそうもいかず天元は一瞬黙ってしまった。
タイミング良く予鈴が鳴ったのが救いだった。
キーンコーンカーンコーン
(まさか、不死川も記憶があるのか……?)
「先生〜うちら体操服忘れたんから貸して〜」
「あぁ?!んなもん派手に冨岡に謝ってこい!ほら!行った行った!」
「えぇええぇ!!!」
(まぁ……考えすぎか…地味に考えたって仕方ねぇしな、!)
慌てて出ていく生徒たちを見送り、天元は美術室にひとり向かうのだった。