第3章 動き出す時計の針…
『どうしよう…』
手に握り締めた紙とかれこれ30分は睨めっこしている。
紙に書かれているのは中也の電話番号…
中也に頬にキスされた時にポケットに入れられていたのだ。
きっと太宰さんにバレないようにする為にあんな事をしたのだろう…
自分の知らないうちにそんな色仕掛けもスマートに出来るようになったんだと思うとちょっぴり悔しくなった。
それでも私が好きだと云ってくれたあの瞳に嘘はなかった…
その事実だけで私は嬉しくて堪らない。
でも私たちは今、敵対組織の人間だ…
付き合うなんて許されるはずがない。
かといって探偵社を辞めてポートマフィアに戻るつもりはない。
"太宰を頼む…人を救え…お前は闇の花なんかじゃない…"
織田作との約束だから…
私はもう殺人人形じゃない。
鏡花ちゃんが35人殺したと云っているが、私が殺した人数はもっと多い。
数えることすら出来ない…
いくら人の命を救おうが、私の罪が消えることはない。
だからこそ私は人を救う側にいなくちゃいけない…
中也とは一緒になれない。
そう自分に云い聞かせるも…
私の手は無意識に動いていた。