• テキストサイズ

白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第16章 彼女からの誘い


 11月も半ばを過ぎると夜は冷え込む。塔矢名人宅での研究会でも、ストーブが稼働するようになっていた。
 1局打っての休憩時間、緒方は何の気なしにスマホを手に取る。画面には星歌からのメッセージ。
「緒方さん、こんばんは。テスト終わりました! 新宿で文豪たちの自筆展やってるんですけど、もしよければ一緒に行きませんか?」
 自筆展か…と、星歌が幽玄の間で川端康成の書に見入っていた姿を思いだす。この子から誘ってくるなんて、特別な感じがするな…とあたたかな感情が広がる。
「緒方さん、なんか嬉しそうっすね? 女の子からですか?」
 芦原がニヤニヤしながら緒方に声をかける。
「うるさい」
 緒方はクールに一蹴する。芦原に志水くんのことを話せるわけがないからな…と、優越感と罪悪感が入り混じっている。
「否定しないってことは、やっぱり女の子からかな?」
 芦原は少し離れたところでアキラに囁く。
「女の子…?志水さん?」
 アキラは、芦原が言う「女の子」といえば星歌だと思って反射的に答えただけであったが、芦原のハッとした顔を見て後悔する。
「…緒方さん、星歌ちゃんとやり取りするような仲になってるのかな…」
 芦原はすっかり落ち込んでしまっていた。

 研究会後、緒方は自宅で星歌へ返信する。
「いいな、行こう。いつだ?」
「やった! 今週末からです! 詳細送ります!」
 すぐに星歌からの返事が届く。オレの返信を待っていてくれたか?と、星歌の無邪気な笑顔を思いだし、口元に笑みが浮かぶ。
 いつものように日曜日13時に星歌のマンションへ緒方が迎えに行くことに決まった。文豪の自筆展、以前のオレには縁遠い催しだったろうにな…。緒方はそう考えながら、遅い夕食の支度を始める。あの子から誘ってくれた…。その特別感が緒方の胸を満たしていた。
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp