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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第12章 秘密の約束


 格上との対局に勝ち、緒方はひそかに興奮していた。惚れ惚れするくらい上手く打てたな…そう思いながら緒方がカフェのガラス扉を押し開けると、星歌はリーフレットを片手にスマホを睨むように見ている。あの真剣な顔は…?と緒方が考えていると、星歌は慌ててリーフレットとスマホをエプロンのポケットに仕舞う。
「いらっしゃいませ」
「何見てた?」
「…学校で美術館のリーフレットもらってきたんです。でも、行き方を調べたら…乗り換えがややこしくて、行けそうにないなって」
 クールに尋ねる緒方に、星歌は残念そうに答える。緒方は、星歌が乗り換えに失敗して帰りが遅くなったことや方向音痴ぶりを思いだしつつ、何気なく聞く。
「美術館、どこだ?」
「渋谷です。浮世絵の特別展、見たかったんですけど…日本の路線は複雑すぎます」
 星歌はわずかに頬を膨らませている。勝利の余韻もあって緒方の胸には高揚感が広がっている。
「じゃあ、車で行くか?」
 口に出してからすぐ、勝った勢いで何を言ってんだオレ…と心がざわつく。この軽さ、芦原みたいじゃないか…?
「え、いいんですか?ご迷惑じゃないですか?」
 少し不安そうだが目を輝かせている星歌を見ると、緒方の心のざわつきは静まっていった。
「別に暇だからな」
 緒方は心の中で、この子が困っているから連れていってやるだけだと、自分に言い聞かせる。
「やった!じゃあ、先生いつ行けます?」
 明るく弾むような笑顔の星歌は、ポケットからスマホを取りだす。
「連絡先、交換しときます?」
「いいのか?」
 星歌の提案に緒方は驚き、聞き返す。
「緒方先生なら大丈夫ですよね? 芦原先生だと…ちょっと、あれですけど」
 クスクス笑う星歌を見て、緒方の胸には芦原に対しての優越感が湧き、心臓はドキリと高鳴る。
「ああ、交換しておこう」
 緒方はスマホを取りだして、星歌と連絡先を交換する。
「週末ならあいてる。スケジュールを決めたら連絡する」
「ありがとうございます!楽しみです!」
 この子の笑顔は、オレに対しての特別なものと自惚れてもいいのだろうか…。そんな気持ちとともに、緒方の高揚感はひときわ増していた。
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