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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第10章 海王高校文化祭


「ごゆっくりどうぞ」
 星歌は、抹茶と和菓子を並べて、棋院のカフェと同じように言った。緒方とアキラは席で抹茶と和菓子を味わう。アキラは対局時とは全く違った表情で、年相応に楽しげにしている。棋士としては知り尽くした相手と思っていたが、こんな顔もするんだな…と、緒方の胸に、弟弟子への親しみが一段と増している。
 非日常的な雰囲気が気分を高揚させ、ごく普通の和菓子でも特別な味わいに感じられた。アキラは楽しそうだし、志水くんの浴衣姿も見られたし、来てよかったかもな…と緒方は思いながら和菓子を口にする。
「あ、そうだ! 芦原さんに志水さんの写真頼まれてた!」
 アキラが和菓子を食べながら思いだしたように言い、写真を撮りたいと星歌に声をかける。
「え、本当に撮るんですか…?」
 星歌は苦笑いをして乗り気でない様子だが、アキラの困った顔を見て了承する。星歌が浴衣姿で微笑む姿を、アキラがスマホでパシャリと撮る。この笑顔、芦原に見せる必要あるのか? と、緒方の胸には嫉妬のようなざわつきが芽生えている。緒方は抹茶を飲みながら、オレも撮りたいと言えば撮らせてもらえるのか…?と思う。だが、オレはどうしてそんなことを思うんだ…?とも考える。芦原だって弟弟子だぞ、応援してやれよ…と自嘲しつつ、アイツの軽いノリに彼女は合わないと、複雑な思いが強まっている。アキラへのあたたかな感情とは違い、芦原への苛立ちが胸を締めつける。
「いい感じに撮れましたよ」
 アキラが向ける画面には、笑顔の星歌が写しだされている。確かによく撮れてはいるが、これが芦原に送られるのか…と、緒方は複雑な気持ちを抱く。
「写真、変なことに使わないでくださいね!」
「大丈夫、芦原さんに送るだけですから」
 笑いながら言う星歌にアキラが返す。緒方は、芦原になんか送る必要ないだろ…。撮れなかったとか適当な言い訳しておけばいいんだ…と、誰にも言うことのできない感情を抱えていた。
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