第9章 制服騒動
このまま黙ってコーヒーを飲んでいるだけでは本心を悟られてしまいそうだと、緒方は少しの焦りを覚える。自分が思っている以上に顔に出ているらしいからな…と、星歌に「かなりわかりやすい」と言われた表情の変化についての会話を思いだしていた。そんなに顔に出ているか?と納得できない部分もあるが、今ここで自分の気持ちを読み取られることは避けたかった。先ほどのやり取りで芦原の名前が出たこともあり、緒方は星歌に尋ねる。
「そういえば、芦原はこの頃どうだ?キミを困らせるようなことを言ってないか?」
「緒方先生、芦原先生に言ってくださったんですよね。ありがとうございます。おかげさまで、この頃は普通に話せてます」
星歌はカップやグラスを1つずつ丁寧に拭きながら、穏やかな笑顔で答える。彼女の声には安堵が滲んでいた。
「それはよかった。アイツも少しは学習したか」
あの軽口は封印したのか…志水くんがホッとしているなら何よりだと緒方も安心するが、ふと星歌と芦原が親しげに話す姿が頭に浮かび、それと同時に複雑なざわつきが広がる。おいおい、オレは一体どうしたいんだよ…とざわつきを消すように緒方は内心で苦笑いをするが、それでも一層不穏な気持ちが広がっていく。この子のピュアな笑顔を芦原に見せたくない…その思いを完全になくすことができないでいる。
そのときガラス扉が開き、数人の新しい客が訪れた。
「いらっしゃいませ」
星歌の明るい声が店内に響き、緒方はふと我に帰る。緒方はコーヒーを口に含み、気持ちを落ち着かせる。星歌が客の注文を聞いてカップを準備する様子を盗み見て、どうしてオレはこの子のことを気にしている…?ただのカフェの店員で、しかも高校生だぞ…?芦原じゃあるまいし、どうしてオレが…?緒方はそんな疑問を抱いていた。