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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第6章 弟弟子に対する複雑な思い


 棋院の談話室、昼食を終えた緒方がソファに座り、対局再開までの時間を潰している。盤面を思う緒方の隣に、芦原が腰を下ろした。
「緒方さん、星歌ちゃんのこと教えてください!好きなタイプとか趣味とか、知りたいですよ!」
 芦原の言葉に、彼女の戸惑った表情が緒方の頭をよぎる。緒方は煙を吐きながら答える。
「オレはカフェにコーヒーを飲みに行っているだけだ。志水くんの好みは知らないな」
「そんなぁ…。じゃあ、デートとかどうやって誘えばいいですか? オレ、ガチなんですよ!」
 芦原が食いさがる。コイツ本当にしつこいな…と緒方の内心で呆れと怒りが交錯する。
「まずはもう少し親しくなってからだろ、いきなりは引かれるぞ」
「なるほど!じゃあオレ、もっとカフェ通います!」
 緒方は適当に返したつもりだったが、芦原は納得したように目を輝かせる。緒方の胸に、芦原と志水くんが親しくなる…そんな想像したくないな…とかすかな苛立ちが波紋のように広がっていた。
 その日から芦原は、カフェに頻繁に顔を出すようになった。
「星歌ちゃん、今日もかわいいね!」
芦原は来店のたびに軽口を叩く。
「ありがとうございます」
 星歌は穏やかに返すが、目元にかすかな苛立ちが散らついている。緒方はカウンターの端で、ジジイどもと同じノリか…と呆れつつ、若さゆえ物怖じしない芦原に羨ましさのような感情も芽生えていた。
「芦原くんは熱心だな。志水くん、いつか押し負けるかな?」
 緒方と一緒に来店していた白川が、カフェから帰るエレベーター内で笑いながら口を開いた。
「どうだろうな」
 緒方は複雑な気持ちを隠している。
「妬いてる?」
「どうしてオレが妬くんだよ?」
「幽玄の間に連れていくくらいには、あの子のこと気に入ってるだろ?」
 緒方は白川の言葉に少しだけドキリとした。芦原と志水くんに、オレが妬く…?そんなことがあるわけない、でも2人が話すのを見るといい気がしないのも事実だ。
「あれは、彼女が幽玄の間に入れず悲しんでいたから連れていっただけだ」
「そうか。緒方がそう言うなら、それでいいんだけどな」
 白川の意味ありげな言い方に、緒方は平静を装うのに必死だった。
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