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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第35章 2人を見守る、あたたかな春


 日本棋院のホールでは、毎年恒例の表彰式が開かれている。昨年の最多勝利棋士や最優秀棋士などが表彰され、新入段の棋士には免状が授与される。式後はちょっとしたパーティがあり、棋士やその家族、関係者で賑わう。シャンパングラスや軽食のトレイが行き交い、いつもは盤面で相対する棋士たちも賑わいを楽しんでいるようだった。
 緒方は壁際でグラスを手に静かに立っている。こういうパーティは面倒くせえなと内心でぼやくが、棋士同士の付き合いを考えて毎年渋々顔を出している。
 白川が婚約者を連れて現れ、彼女のドレスアップした姿がひときわ目を引く。
「よう緒方、オレのフィアンセ、きれいだろ?」
「そうだな」
 ニヤリと自慢げな表情の白川に、緒方は軽く返す。華やかに着飾った彼女が白川と笑い合う姿を見ながら、ふと、いつかこんな場に連れて来られたら…と、星歌の笑顔が脳裏に浮かぶ。ひまわりモチーフのブレスレットをキラリと光らせ、ドレスを着てそばにいる姿を想像し、胸があたたまる。だが、星歌はまだ17歳だ。気が早すぎるな…と自嘲の笑みをこぼす。
「緒方、どうした?星歌ちゃんのことでも考えてたか?」
 白川はニヤニヤしながら再び近づいてくる。
「…お前は彼女とよろしくやってりゃいいだろ」
「はは、嫉妬かよ! 星歌ちゃんも連れてくればよかったのに」
 白川は、毒を吐く緒方の肩を楽しげに叩く。星歌をここに…そりゃ悪くないが、あの子のペースを大事にしなきゃな…。緒方は星歌の立場を思う。
 喧騒の中、緒方は遠くを見つめている。白川は真面目な顔になった。
「緒方、十段獲れよ。星歌ちゃんの応援があればいけるだろ?」
「ああ」
 星歌がいれば、なんだってやれる気がする。ホールのざわめきが、緒方の闘志と星歌への想いを優しく包み込んでいた。
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