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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第29章 弟弟子からの応援と約束


 塔矢名人主催の研究会は、来月の十段戦挑戦手合いを控えた緒方にとって、気合いと集中力が高まる場だ。塔矢先生が相手でも、絶対にタイトルを獲る…と、盤面を睨みながら意気込む。
 休憩時間、棋士たちがお茶を手に軽い談笑をする中、緒方は棋譜を振り返っている。
 芦原が緒方の隣に腰を下ろし、いつものように軽やかな口調で声をかける。
「緒方さん、ちょっと話いいですか?」
「何だ?」
 緒方はクールに返すが、内心ではまた志水くんのことか…?と、複雑な思いを抱く。
「オレ、星歌ちゃんに告白したんです」  
 芦原がにこやかに言う。緒方の棋譜を握る力が一瞬強くなり、告白…?と胸に緊張が走るが、いや、オレには関係ないだろ…?と思いなおして、平静を装う。
「振られちゃいました〜」
「そうか」
 緒方は短く答えるが、なぜ、こんなにホッとしてるんだ…と、内心の安堵に自問する。オレは志水くんのことを…。車内での目が合った瞬間や誕生日メッセージが思いだされ、胸が熱くなる。
 芦原は目を細める。
「だから、オレに遠慮しないでいいですから」
「何のことだ?」
 平静を装いながらも、自分の気持ちをごまかしきれないような気がしている。ふと、白川が言った「そんなにあの子が好きなのか?」の言葉も頭に浮かぶ。
「本当に2人とも嘘がヘタですよ」
 芦原が笑う。緒方は無言でお茶を口に運び、オレはタイトルを獲るんだ、恋愛感情なんて持っちゃいけないだろ…と、内心で自身に言い聞かせる。
「オレ、星歌ちゃんに『応援する』って言ったんで、緒方さん頼みますよ?オレは、兄弟子のタイトル獲得も恋も応援しますからね」
 芦原はそう言って立ち上がった。緒方は芦原の背中を見送り、志水くんが傷つくなら、もう会わないのが正しい…と、十段戦への集中を保とうとする。でも、あの子の笑顔をもう一度だけでいいから見たい…。緒方の心の中で静かな葛藤が続いていた。
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