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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第26章 2人を引き裂く噂


 対局中の昼休憩、緒方はいつものように1人で外に出ようとした。
「ちょっと付き合えよ」
 白川に強引に腕を引かれ、断る間もなく日本料理店の個室へ連れられた。白川は明るい口調で雑談を続けているが、緒方は警戒心を強めている。
 注文した料理が揃うと、白川は声を小さくする。
「なあ、緒方。志水くんとお前のことが噂になってる。制服のあの子がお前の車に乗ったって言われてるぞ?」
「…雨が降った日だな…傘がないから送っただけだ」
 平静を装って返すが、誰かに見られていたか…と動揺する。
「それはもう、『ちょっとした知り合い』の域を超えてるだろ…」
 白川は大きなため息をつき、探るような目で緒方を見つめる。
「一部じゃ一柳先生のときみたいに、結構ひどいこと言われてるぞ。どうするつもりだ?」
 一柳先生と志水くんの噂…2人はパパ活の関係であるという、聞くに耐えないものだった。実際には伯父と姪の関係であったが…。オレと志水くんもそんなふうに言われているのか…?こんな噂が志水くんの耳に入ったらひどく心を傷めるだろうと、緒方の胸が締めつけられる。それと同時に、タイトルを狙う棋士にこんな噂があっていいのか…?という不安も芽生える。一柳先生と彼女は伯父と姪だから、噂の真偽はすぐに明らかになった。だが、オレと志水くんの場合は、何を言っても好奇の目で見られるんじゃないか…?オレもあの子も、それに耐えられるのか…?
「どうするも何も…オレたちは、やましい関係ではない…」
 そう低く答えるのが精一杯だった。
 白川は諭すように言う。
「お前があの子に惚れてるのは分かった。でもな、いい年の大人と高校生の恋なんて、世間は認めてくれないんだよ…」
 世間か…。志水くんが傷つくならオレは…。緒方が無言でいると、白川は続ける。
「付き合ってるわけじゃないんだろ?だったら2人で会うのやめればいい。そのうち噂も収まるさ」
 緒方は箸を手に持ったまま「会うのをやめる…」と小さく繰り返す。ふと「キミと出かけられて楽しかった」「また来年」の言葉が思いだされ、緒方の心は大きく揺らいでいた。
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