第8章 煉獄家
手土産をいただいたのでお茶の準備をする
ゆあさんが姉上になるのか…
そう考えると嬉しくてたまらない
「お待たせしました、座ってください!」
早くこの気持ちを伝えようと、口火を切る
「兄上にまさかいい人がいたとは知らず、こうして紹介していただけて嬉しいです!結納などのご相談でいらしたのですか?」
ニコニコとしながら聞いてみる
しかし、兄上もゆあ さんも
何だか戸惑っている
「ハハハ!千寿郎すまない!俺がまだ想いを伝えられずにいてゆあとは恋仲ですらないのだ!」
“え!?違うのですか!?”
己の勘違いに気づき、申し訳なくなる
だが兄上は咎める事はせず、続ける
「だが、千寿郎がそのように言ってくれて大変嬉しく思う!千寿郎には苦労をかけているからな…」
“兄上は本当にお優しい。いつも任務でお忙しいのに俺の事を気にかけてくださる”
物心つくころには父上は今のような状態だった
俺は兄上のような剣技の才はなく
兄上にばかり負担をかけていた
だが兄上はいつも気にするなと
優しく言ってくださる
兄であり母でもあるそんな兄上が大好きだ
だからこそ兄上には誰よりも
幸せになってもらいたい…そう願っている
「兄上!ゆあさん!勘違いをしてしまい、失礼しました!兄上が隊士の方以外で女性を連れていらしたことがなかったものですから…そのてっきり…」
ゆあさんに頭を下げる
“穴があったら入りたい…”
すると ゆあさんが言う
「千寿郎くん、頭をあげて。確かに今は恋仲でもなんでもないけれど、私も杏寿郎さんの事が好きだから!だから千寿郎くんも仲良くしてくれると嬉しいな♪」
“あぁ、良かった。兄上は幸せになれるのですね”
そう思うと涙が出そうになった