第2章 鬼のいる世界
【煉獄杏寿郎 視点】
管轄地域で最近、人が姿をよく消すという報告から
待乳山へ向かう
“人々の信仰の場。安心して来られるようにしておかねば”
そう思いながら急ぐ
日も暮れ始め鬼がそろそろ顔を出す時間だ
遠く浴衣姿の女子が見えた
鬼が彼女を喰おうとしているところだ
『炎の呼吸 壱の型 不知火』
鬼が消えたのを確認すると刀を鞘に収め
女子のもとに向かう
「大丈夫か!?怪我はないか!?」
そう呼びかけて顔を覗くと、
彼女はポカンとした顔でいて
しかし恐怖の表情ではなく
ただただ驚いていると言った顔だ
「え?わたしですか?」
“ん?俺と君以外にいないと思うのだが?”
「そうだ!きみだ!怪我はないか?」
もう一度問いかけてみる
「はい、大丈夫です。どこも怪我はしていません」
そう静かに答える彼女を見遣る
やはり表情は先程と変わっていない
「そうか、良かった」
そう言いながらも次の疑問が浮かぶ
「きみはこんな時分に一人で何をしている。夜は鬼がでると聞いたことはないか?」
そう問うと
「いえ。初めて聞きました。それに…ここはどこですか」
“鬼の事を知らないのはいいが…ここはどことはどういう了見だ?”
「ここは待乳山だ。きみは誰かに連れてこられたのか?」
「えっと…ごめんなさい、それすらも分かりません」
“分からないか…だが今はそれももういい。とにかくここから離れなければ!”