第5章 炎柱と水柱
【煉獄杏寿郎 視点】
正座して向かい合って座る
手合わせをする事は別に普通の事だが
なぜか今日はモヤモヤしている
ゆあ の冨岡を見る目が気になった
部屋に入った瞬間、冨岡に目を奪われた
そんな表現が合うような表情をしていた
シン…
と静かな空気が流れる
お互い音もなく立ち上がると
竹刀を振るう
今日はいつも以上に気合いが入る
しばらく打ち合いをしていると
バキっ!と竹刀の割れる音がする
次の瞬間、ゆあ に目を遣る
「危ない!」とゆあ に駆け寄るより早く
冨岡がゆあ を抱え、避けてくれていた
「ゆあ 大丈夫か!?ケガはないか!?」
ゆあにそう聞きくと
「はい…冨岡さんが守ってくれたので無傷です」
そう言って頬を赤らめていた
その姿を見るに、不機嫌になりそうな己がいた
冨岡がそっとゆあ を下ろすと
「ありがとうございました」
そう言ってゆあ が頭を下げる
「いや、こちらの不注意で危ない目に合わせてしまって、すまない」
冨岡が発するその言葉はその通りなのだが
責められているような気がした
「煉獄、少し部屋で横になってもいいか?」
去り際、俺だけに聞こえるように言う
「何があったのかは分からないが落ち着け」
そう言うと冨岡は部屋に戻って行った
冷静さを心がけていたはずが
熱くなっていた事に気づく
“一体どうしたのだ俺は”
自分で自分が分からない
それでもゆあ にもう一度謝る
「ゆあ 本当に大丈夫か?一緒に来るように言っておきながら、すまなかった」
そう言って頭を下げる
するとゆあ は首を左右に振ると
「そんな!謝らないで下さい!私初めて剣技を見ました!なんと言うか…お二人の手合わせに見惚れてボーっとしていました!」
“見惚れていた…か…”
その言葉が妙に引っかかってしまい
困った顔で笑っていた