第5章 炎柱と水柱
前田くんが ゆあ の部屋の前にいるのが見えた
部屋から
「あの…おはようございます」
と言う ゆあ の声が聞こえた
前田くんは何故か何も答えずに
ゆあ の部屋へと入っていく
「申し遅れました。わたくし前田と申します。鬼殺隊で隠しをしております。主に隊服を作っております」
そう言い終わるや否な
スッとスカートに手が伸びる
それをみた瞬間、自分の中のドス黒い感情が湧き上がるのが分かった
ゆあ と前田くんの間に入ると
至って冷静に話す
「前田くん!新しい隊服を届けてくれてありがとう!彼女は隊士ではない。近づかないでもらえるか」
前田くんの顔がみるみる青ざめるのが分かる
「炎柱、隊服はお部屋に置いておきました!それでは失礼いたします!」
そう言うや否や凄い速さで帰って行った
やはりイヤな予感は当たったか…
全く…と思い ゆあ の様子を見遣る
そこには洋装に身を包んだ ゆあ が立っていた。その姿がとても可愛らしく、思わず抱きしめてしまいそうになる
今この状況でそんな事をしては
前田くんと大して変わらないな…
自嘲気味に笑う
「朝餉の用意ができている、食べに行こう」
気持ちを悟られぬように
部屋をでるよう促した
「「いただきます」」
二人で一緒に手を合わせて食べ始める
“抱きしめるのはいけないが、やっぱり可愛らしいと伝えたい!”
なんとも勝手な考えだが伝えずにはいられない
「浴衣姿も良かったが、洋装も似合っているな!とても可愛らしい!」
そう伝えると ゆあ の顔が
赤くなっていくのが分かる
「ありがとうございます!浴衣も褒めていただきましたが、私は洋装の方が気持ちが楽なので…本当に買っていただきありがとうございます!」
赤くなりながらも満面の笑みで
お礼を言う ゆあ の姿に
鼓動が早くなる
…この感情はなんなんだ…
今まで感じた事のない己の感情に
戸惑っていた