第30章 新しい時代-其の壱
大学のカフェテラスにきた
飲みものを注文してテーブルに向かい合って座る
「いきなり声をかけてすみません。これを見て欲しくて…」
そう言ってスマホの画面を見せてきた
「!? 私の浴衣です!!どうしてこれを!?」
私は驚いた。昨年着た浴衣をクリーニングに出したら、クリーニング店から紛失してしまったと連絡がきて諦めていたからだ
「たまたまSNSでこの浴衣を着ているあなたの写真を見つけました。信じてもらえないかも知れないんですが、これ、我が家に代々受け継がれているものなんです」
「…え?どういう事…?」
「私の高祖母が着ていたもので、それが代々受け継がれてきました。というか、受け継いで100年後の時代まで残すよう高祖父の遺言でした」
「??ごめんなさい、ちょっと意味分からないです…あなたの高祖母さんが私と全く同じ色柄の浴衣を着ていて…遺言で残す…?」
「すみません、俺も説明が下手で…あの、俺の家に来てくれませんか?あ!家って言っても実家です!そこにこの浴衣があって…」
「いやいやいや、ごめんなさい、それは無理です。ちょっとやっぱり何かの勧誘ですか?あの、失礼します!」
立ち上がりその場を去ろうとした
「待って!」そう言って手首を掴まれる
「あの!あなた名前はゆあ さんじゃありませんか!?」
“え?名前まで知られてて怖いんだけど!”
「答える義理はないので!」
「分かりました!答えなくていいです!せめて、これを受け取って下さい!あなたのものです!」
そう言って一冊の古い本を手渡された
「それを読んで、もし要らなければ捨ててもらって結構です。ですがもし読んで気持ちが変わったらこのLINEに連絡下さい!」
そう言って行ってしまった
“わたしの物って言っていたけれど…どういう事?”