第28章 鬼のいない世界-其の参
目を覚ますとそこは病院のベッドの上だった
「先生!患者さん目を覚ましました!」
そう言って出ていく看護師さんの姿が見えた
「ゆあ!あぁ、無事でよかった…」
「お母さん…」
「おばあちゃんがあなたの家に浴衣を届けようと行ったら、倒れていたのよ!とにかく無事で良かった…おばあちゃん呼んでくるから!まだ起き上がらないようにね!」
そう言うとお母さんは病室から出ていった
…今何月何日なんだろう…
そう思いスマホを起動してみる
令和◯年6月10日
“私が大正時代に行く前の月だ”
「ゆあ、よかった目を覚まして。あと少し休んだら退院できるそうだから、家まで一緒に行くからね」
「おばあちゃん、あのさ…」
「うん?なんだい?」
「ううん。何でもない。いつもありがとう」
ーーー
「おばあちゃん送ってくれてありがとう」
「いいのよ、体に気をつけてね。また様子を見に来るから。浴衣、部屋に置いてあるから見てね」
「うん、色々とありがとう」
“やっぱり私は帰ってきたんだ…”
部屋に入りたとう紙を開けてみる
そこには初めてみる浴衣が入っていた
そっか…そうだよね
杏寿郎さんが褒めてくれた浴衣…
涙が込み上げてくる
たとう紙をそっと閉じた