第27章 鬼のいない世界-其の弍
手紙を開く
『ゆあ へ
何を書いたら良いのか分からず
今日までの事を思い出しながら書いている
ゆあ に出会ったあの日
鬼を怖がる素振りはなかったのに
不安で泣いているきみをみて
胸が締め付けられる思いがした
思わず抱きしめたあの時から
俺はゆあ を好きだったのだと思う
それでも自分には鬼殺隊の剣士としての
責務があり、その自分の気持ちに嘘を
ついて日々を過ごしていた
それでもやはりゆあ への気持ちは
日に日に大きくなり、責務よりも
ゆあ への気持ちを大切にしたいと思った
ゆあ は強く優しい人だから
自分の事よりも俺や他の人を思いやり
常に助けてくれた
そして自分の気持ちには蓋をして
心配かけまいと振る舞った
そんなゆあ が決戦の日
行かないでほしいと素直な気持ちを
伝えてくれて嬉しかった
ゆあ にはずっと側にいて欲しい
隣で笑っていて欲しい
鬼がいなくなった世界で共に生きたい
その気持ちは変わらない
けれど、それが叶わない事も分かっている
俺にはゆあしかいない
離れる事になったとしても
ゆあ だけを愛している
杏寿郎』
涙が頬を伝う
言葉が出てこない
“杏寿郎さん、気づいていたんだ”
「杏寿郎さん、私も杏寿郎さんだけを愛しています。この先もずっと…桜寿郎と由火 の事、よろしくお願いします」
「ああ、立派に育てると約束しよう」
「私からの返事になるんですかね…私も手紙を書きました。これは…その…杏寿郎さんが一人でいる時に読んでいただけると嬉しいです」
「分かった」
「泣かないと決めたのに…ダメですね…」
「ゆあ は涙もろいからな」
そっと口付けをかわす
「おやすみなさい」
「おやすみ」
私はこうして眠りについた