第3章 大正にいるという事実
【煉獄杏寿郎 視点】
「あ、はい、すみません。ありがとうございます」
冷泉ゆあはそう言ってカレンダーから離れる。
「 冷泉ゆあさん、そこに座ってくれ。お茶を飲もう」
そう促すと彼女は静かに正座した
二人で向かい合わせに座ってお茶をすする
“ただならぬ雰囲気でカレンダーを見ていたな。今日が何月何日かも分からない状態だったのか?”
「 冷泉ゆあさん、カレンダーを見ていた様だが…何か記憶障害でもあるのか。出会った場所でもきみは自分がなぜここにいるのか分からないと言っていたが…」
彼女に気を遣わせない様に、
だが確信を迫るような眼差しで聞いてしまった
彼女の瞳が大きく揺れた
肯定するような…否定するような
不安と緊張がみて取れた
“やはりまだ聞くべきでは無かったか…やや早急過ぎたか…”
話さなくてよい
そう言おうと思った時、彼女が口を開いた
「私がこれからお話する事は煉獄さんにとっては突拍子もない事だと思います。ですが決して嘘はいいません。聞いていただけますか」
しっかりと俺の目を見ながら話す彼女
そこには意を決したのかもう不安の色は無かった
「…分かった。きみのはなしを聞かせてくれ」
彼女の考えをきちんと聞こう
そうして俺も姿勢を正す
彼女は大きく息を吸い込み、ふぅと息を吐いた
一通り話し終えたかと思うと
冷泉ゆあの目から大粒の涙が溢れた
本人も自分が泣いている事に驚いているようだった
それだけ緊張をしていたのだろう
俺は無意識に 冷泉ゆあを抱きしめていた
そして
「まずは泣いたらいい。我慢する必要はない。気持ちは吐き出した方がいい。」
そう言っていた