第26章 鬼のいない世界ー其の壱
そうして部屋に二人きりになった
「二人だけでこうして話すのは久方ぶりだな」
「そうですね…」
「ゆあのいた世界にまた一歩近づいているな」
「はい。そう思います」
「あの日初めて聞いた時は想像すら出来なかった。まさか自分の代で、決着をつけられるかもしれないなどとは…」
「無惨が焦るくらい、皆さん、お強いという事です」
…(沈黙が流れる)…
「杏寿郎さん、今から話す事は一人言です」
「ああ」
「私、杏寿郎さんに行かないでほしい。そう思っています。もう会えなくなる気がするんです。でも、責務を全うする為に戦う、強く優しい杏寿郎さんが好きなので、きちんと送り出そうと思っています」
「ゆあ…」
「でも…でも…泣いてもいいですか?…」
そう言うと杏寿郎さんが強く抱きしめてくれた
その腕の中で泣いた
初めて会ったあの日にしてくれたように
泣いている私を抱きしめてくれている
「ゆあ 抱いてもいいだろうか」
そう言って杏寿郎さんは着物を脱ぐと
それを敷いて、その上に私を寝かせる
杏寿郎さんの体の傷痕をみると
無限列車での戦いの日を思い出す
また涙を流す私の顔にそっと手を添えると
優しく口付けされる
私の首元にそっと口付けをしたかと思うと
そのまま下に口付けていく
「ゆあ のこの香、この感触、焼き付けたい」
「私もです。杏寿郎さんのこの温かさをずっと…」
「ゆあ… きみを守ると約束したからには必ず戻ってくる!だからここで待っていてくれ!」
「はい。杏寿郎さんが帰って来るまでここで待っています」
そして体を深く深く重ね合わせた