第3章 大正にいるという事実
頭の中が真っ白になるとはこういう事かと
妙に冷静な自分がいた
私は今紛れもなく大正という時代にいる
それは明治維新が終わり西洋文明が花開き
富国強兵へと日本が向かっている、そんな時代だ
だけど煉獄さんは自分の事を鬼狩りだと言った
鬼なんてそんなものいるの?
私を襲ってきたのは本当に鬼なの?
自分が授業で習う大正時代とはかけ離れていて
なかなか頭の中が整理ができない
そんな時声が聞こえた
「米が炊けるまで茶を飲んで休もう」
振り返ると煉獄さんがお盆にお茶を乗せて
入り口に立っていた
「あ、はい、すみません。ありがとうございます」
そう言ってカレンダーから離れる
“あんなにカレンダーに近づいて…変に思われたかな”
そう考えていると
「 冷泉ゆあさん、そこに座ってくれ。お茶を飲もう」
煉獄さんはそう言って優しく微笑むと、
座布団に座るよう促してくれた
二人で向かい合わせに座ってお茶をすする
しばらくの沈黙のあと、煉獄さんが口を開いた
「 冷泉ゆあさん、カレンダーを見ていた様だが…何か記憶障害でもあるのか。出会った場所でもきみは自分がなぜここにいるのか分からないと言っていたが…」
先程までと違い、
静かにでもはっきりとした声で聞いてきた
記憶障害…それならばまだ良かったかもしれない
私は大正という時代の事を知っている
正確には学校で習った範囲で….だ
そんなあやふやな知識がある分
今はかなり混乱している
私は迷いながら、言葉を選びながら、
静かに答えた
「私がこれからお話する事は煉獄さんにとっては突拍子もない事だと思います。ですが決して嘘はいいません。聞いていただけますか」
しっかりと煉獄さんの目を見ながら
自分の気持ちが伝わる様に話す
「…分かった。きみのはなしを聞かせてくれ」