第19章 継承
朝、起きて隣に杏寿郎さんが居た
それだけで、毎日無事を確認できて嬉しい
起こさないようにそっと布団をでようとしたが
腕を掴まれた
「もう少し一緒に居てくれないか」
そう言われて再び隣に寝転ぶ
「杏寿郎さん、おかえりなさい」
「だだいま」
そう言うと私の髪をそっと撫でてくれた
温かい気持ちになり再び眠りそうになる
…?…何か痛い…お腹が痛い…
「痛っ」そういうと顔が歪む
杏寿郎さんが、目を見開き
「どうした!?ゆあ !どこが痛む!?」
「お腹が…」
杏寿郎さんは急ぎ起き上がると
「千寿郎!起きているか!?急ぎ産婆を呼んでくる!ゆあ を頼む!」
千寿郎くんの返事を聞く間もなく
産婆のもとへと駆け出す
千寿郎くんが走ってくる音が聞こえる
「ゆあ さん!大丈夫ですか!?」
「うん、まだ少し…イタタタ…痛むくらいだから大丈夫…」
そう言うも、痛みは徐々に増してくる
「ゆあ !産婆を連れてきたぞ!」
杏寿郎さんに背負われた産婆さんが目に入る
若干シュールな光景だ
「どれどれ、見てみようかね」
そう言うと産婆さんが診察してくれる
「うんうん、あと一刻ほどで産まれそうだね」
え!?そんな事も分かるの!?
「して、俺はどうすればいい?」
「準備をしますから、湯を沸かしてくださいな」
「承知した!」
「あの…イタタタ…私は…どうすれば」
「そうだね…朝餉は食べたかい?出産は体力がいるからまだなら食べなさい」
「ゆあ さん、こちらに膳をお持ちしましょうか?待っていて下さい!」
そう千寿郎くんが声をかけてくれる
「ありがとう…」
かろうじてお礼が言える…というくらい痛い
遠くから騒がしい声が聞こえる
「何!?ゆあ、産まれそうなのか!?」
「天元さま、私達お手伝いしてきます!」
「おう!これも何かの縁だ!派手に手伝ってやれ!」