第13章 時計の針が動く
「杏寿郎さん、私は覚えていないんだけど…祖母がね、話してくれた事があるの」
「どんなことだ」
「私が小さい頃、祖母の家の神社で金色の髪の男のが迷子になっていると言って私が祖母を呼びに来たんだって。祖母が言うには、その子は珍しく着物を着ていたもんだから歌舞伎役者の子かなんかだと思ったらしいの」
「その子の親の事を聞こうとしたけれど、その子はとても疲れた表情をしていたから布団で寝かせてあげたんだって。そして、一旦離れて戻ってきたら居なくなってたんだって」
「そうか…」
「祖母は狐に化かされたって言ってましたけど、その子は杏寿郎さんだったんでしょうか」
杏寿郎さんが優しく私の髪を撫でる
「今思うと、ゆあ からする桜の香りは、どこか懐かしさと安心感があった。あれはやはりきみだったと思う」
「もう一度会えて嬉しい。あの時はゆあ に救われた…今度は俺がゆあ を安心させられるように側にいる」
杏寿郎さんに腕を回しぎゅっとすると
どちらからともなく、そっと口付けた