第13章 時計の針が動く
「隣に寝てくれるか?」
杏寿郎さんにそう言われて同じ布団に入る
「長い長い夢を見ていた」
…え?…
「術の影響ですか?」
「いや違うかな。意識が遠のく時に幼き頃の記憶なんだが…忘れていた事がある」
「いったいどんな事でしょう。聞かせてもらえますか?」
ーーー
「大抵のことは怖くはなかった俺だが、その時だけは言い知れぬ不安が襲ってきた。ここはどこなんだと…」
“それって…”
「そんな事があったんだね…」
「それから…」そう言うと
杏寿郎さんにきつく抱きしめられる
「その時、少女からゆあ と同じ桜の香りがしていたんだ」
“私と同じ香り?この練り香って事?”