第12章 責務を全うする
俺の目の前には
今まで対峙した鬼とは比べ物にならない程
の力を感じる鬼がいる
“これが上弦か…”
今までにない緊張感に、
一気に闘気を練り上げる
「素晴らしい闘気だ杏寿郎!杏寿郎ぉ〜鬼にならないか?」
「なるわけないだろう!俺は君が嫌いだ!」
「そうか、残念だ…」
「俺は俺の責務を全うする!」
「死んでくれ!杏寿郎〜!」
… … …
…杏寿郎…杏寿郎…
ん?…母上?…
「杏寿郎、私は強く優しい子の母になれて幸せでした。弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」
母上…
やさしい手だ、温かい…
「俺はちゃんとやれただろうか。やるべきこと果たすべきことを全うできましたか?」
「立派にできましたよ」
そういうと母上は微笑んだ
母上…
「てすが、まだやり残した事はありませんか…杏寿郎」
まだ…やり残した事…
… … …
“杏寿郎さん…逝かないで…戻ってきて…”
絶対に死なせない
ハァ、ハァ、ハァ
心臓マッサージの手を止めて確認する
“心臓が動いた!”
「今すぐ運んで!それから、蝶屋敷に千寿郎くんを呼んで!」
… … …
やり残した事…守ると約束した人…
この香り…ゆあの声がする…
そうして静かに意識を手放した