第6章 ブルーベリー・ナイツ(切島鋭児郎)
それは、いつか途中でお開きになった轟くんのNO.2祝いをやり直そうとみんなで集まった日の夜の事。
私は、ちょっとした地獄に突き落とされていた。
「このニュースさぁ、マジなの?ねぇマジなの!?上鳴くん!」
私のスマホに飛び込んできたニュース、それは……
「ホークスがさぁ、あのぱっきーと付き合ってるって、嘘でしょ!?ねぇ嘘だって言って!」
そう叫びながら、隣に座っていた上鳴くんの肩を掴んでガクガクと揺らしていた。
「ちょ、甘井酔う酔う、やめろって!」
仕方なく上鳴くんを解放すると、おもっくそでっかい溜息を吐かれた。
「甘井……お前が昔からホークスファンだったって事は認めるけどさぁ……アイドルじゃねーんだから、カノジョいる位で喚くなよ……」
「ちがう、なんでぱっきーなのかって、聞いてる……公安委員会会長と?グラドル?どーやったら、接点出来んの……」
「ホークスにだって、女選ぶ権利と切欠位、あんだろ」
そう言う上鳴くんを、ジト目で見る。
別に……何かの間違いで自分が選ばれるとか、そんな夢みたいな事はこの歳になって流石に思わない。
けど……
「クッソショック……上鳴くん、一発殴らせて」
「だから、何で俺にそう絡んでくんの!?隣だから!?お前一発じゃ済まなそうだからやめて!」
「テメェらうっせんだよ!ぎゃあぎゃあ喚くんじゃねぇ!」
爆豪くんがうっせぇと人にキレる割に自分も同じ位うっせぇ声で怒鳴ってくる。
「じゃあ、爆豪くんが代わりに殴られて」
「どういう理論だ!ヘラ鳥のオンナだぁ?アホか!何でそんなんで俺が殴られんだ!ざっけんな!」
「……はぁ……ホント、もぉ……」
「おいテメェ、無視すんじゃねぇ!」
爆豪くんが何やら言ってるけど、これ以上言い合っても何にもならないので無視してテーブルに突っ伏した。
「まぁ、ドンマイ。甘井」
耳郎ちゃんが軽く励ましてくれるけど、私の心はそこはかとなくどこまでも真っ暗になった。
そりゃ、ホークスだって彼女の1人や2人位、居んだろうけど……それは、墓場まで持ってって欲しかった……いちファンとしては。
「くっそぅ……もう、飲んだらぁ!すいません、おねーさん!ビールジョッキで!」
ヤケクソで飲み始めたお酒が、色々間違いの始まりだった。