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The usual one【ヒロアカ中心】

第5章 百合の子(緑谷出久)


 緑谷くんの部屋の前で、戸惑っていた。

 さっき、あんな酷い事、言っちゃったばかりだし……
 お茶子ちゃんが好きだって、言っちゃったし……
 ……どう、しよう……

 すると、いきなりガチャっとドアが開いて、緑谷くんが驚いた顔をしていた。
 「っみ、緑谷くん……」
 「ごめん……誰か居るような、気がしたから……」
 「あの、私……えっと……」
 「……よかったら、入って」
 緑谷くんに促されて、私は部屋の中に入った。

 ベッドに腰掛けた緑谷くんが、口を開いた。
 「僕の部屋の前にどうして居たの?」
 「えと……」
 「うん」
 「あの、さっき……ごめん、なさい……私……」
 「うん」
 緑谷くんも、お茶子ちゃんみたいに優しく相槌を打ってくれた。

 その優しさと、お茶子ちゃんに対する気持ちとで、いつの間にか、涙が零れていた。

 「お茶子ちゃんの事……っ、傷つけちゃった……私っ、最低なの、自分の事ばっかりなの……!」
 「うん」
 「……っごめん……私、緑谷くんの事が、好きなの……気付いちゃったの……」
 「……そっか」

 ベッドから立ち上がった緑谷くんが、私をふんわりと抱きしめた。
 「甘井さん、話してくれてありがとう」
 「わ、たし……ごめんな、さ……」
 「いいよ、もう謝らなくて」

 緑谷くんの腕の中が、あったかい。

 耳を胸にくっつければ、トクトクと心臓の動く音がして……何だか、安心する。

 「落ち着いた?」
 そう言って頭をよしよしと撫でられる。
 「……うん……」
 「そっか。じゃあさ、もう部屋に戻らないと」
 「あ……うん……」
 
 何かをちょっと期待した自分が恥ずかしくなる。

 緑谷くんから身体を離して、ドアの方へ向かった。
 「じゃあ、おやすみ緑谷くん……また、明日」
 
 ドアノブを捻ろうとしたら、その手の上に緑谷くんの手が重ねられた。

 「ごめん。戻れって言っといて、なんだけど……」
 「……緑谷、くん……?」
 「やっぱり、帰したくないんだ」

 緑谷くんの手が、あつい。

 その熱さが、私の身体もじんと熱くさせる。

 「けど、このままいたら僕、甘井さんの事……」
 「大丈夫……だって、お茶子ちゃんが、言ってくれたから」
 「……何て?」
 「私の事、世界一綺麗だって……」
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