第5章 百合の子(緑谷出久)
「そっか。麗日さん、優しいね」
そう。
お茶子ちゃんは、優しくて、最高の……友達。
「私、お茶子ちゃんのおかげでここまで来れたの……だから私、もう大丈夫」
そう言った私を、緑谷くんは後ろからそっと抱きしめてくれた。
微かにお風呂の匂いがして、これから何が起こるのか……なんて考えたら心臓が早鐘を打った。
「ちょっと、麗日さんに嫉妬しちゃうな、僕」
「え……」
「それと、これ。かっちゃんの着てた上着でしょ」
「あ、えと……」
私が答えられないでもじもじしていると、上着を剥ぎ取られて、それはぱさりと床に落ちた。
「かっちゃんと、何かあったの?」
耳元で言われて、ぞくんと感じてしまう。
「何にも、っ……ちょっと話した、だけ……ていうか、そんな雑に置いたら、皺になっちゃう……」
「僕が後で洗って返しとくよ」
それじゃあ、爆豪くんにもう緑谷くんと私が何かあったって言ってるようなもんだ。
「いい、私が返すから……っ!?」
突然、ショートパンツの中に手が滑り込んできて、吃驚してしまう。
「あ、み、どりやく……」
「僕、もう誰も甘井さんに指一本、触れて欲しくないんだ」
ショーツの上から、すりすりと大事な所を撫でられる。
「ひゃ、ぁんっ、や……」
「今夜は僕の事だけ、考えて」
そう言われて、いきなりお姫様抱っこをされて正直戸惑う。
私……これから、ホントに……!
そっとベッドに降ろされて、緑谷くんの顔が、鼻先が触れ合いそうな程近くに来る。
思わず目をギュッと瞑ると、おでこにちゅっとキスをされて、拍子抜けしてしまう。
「お、おでこ……」
「口がよかった?」
「あ……えと……」
というか、今まで無視してたけど……
緑谷くんの部屋……
「すっごい……オールマイトだね……」
私がそう言うと、いきなり?みたいな顔をした緑谷くんがいつもの表情に戻った。
「あ、いや、うん!そ、そうだね……」
これからこの部屋でそんな事するなんて……
「もう授業中、オールマイトの顔……見れない……っ」
「いいよ、見なくて」
私の顔を、手で包んだ緑谷くんが、また男の顔をした。
「もう、僕の事だけ見ててよ」
その言葉と顔に、キュンとしてしまう。