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The usual one【ヒロアカ中心】

第5章 百合の子(緑谷出久)


 「え?甘井さん、それって……」
 「そ。私、女の子が好きなの。男子なんて、絶対無理」

 ただのクラスメイト……しかも好きな子の好きな人にかなりあけすけな話をしてるなぁなんて自覚はあった。

 「そ、そうなんだ……」

 あれ、引いちゃった?
 そうだよねぇ……

 「……じゃあ、さ……」

 緑谷くんが、とても真剣な顔をした。

 「僕も、女に生まれたかったな」
 「え?」

 何を言ってるの?緑谷くん。

 「そしたら甘井さんに、好きになって貰えたかもしれないのに」

 ちょっと、よく分からない。

 私の目の前に、知らないひとがいる。

 こんなの、緑谷くんじゃない。

 だって、緑谷くんが好きなのは……

 そう思った時には、既に緑谷くんに抱きしめられていた。

 意外とがっちりした身体に抱かれて、思考が上手く回らない。

 「み、緑谷くん、離して!」
 「ごめん」
 「謝るなら、離してっ」
 「甘井さんが、好きなんだ!」

 ……え……?

 え?え?

 「お茶子ちゃん……は……」
 「麗日さんじゃないんだ」

 熱い腕が、私を捕まえて離さない。

 「甘井さん……好きだよ」

 何故か、抵抗するのを忘れた。

 その隙を狙われて、私はいつの間にか床に押し倒されていた。

 私を見下ろす緑谷くんは、今まで見た事もないような表情をしていた。
 これが、男の顔ってやつなんだろうか。

 「や、やだ……」
 「嫌なら突き飛ばして。個性使ったって、いいよ」

 そうだ。
 嫌なら緑谷くんの言う通り、突き飛ばすなりなんなりすればいい。

 けど、身体が動かない。


 なんで……?


 「麗日さんが、好きなんでしょ?」
 「っ、そ、そうだよ!」

 そうだよ。

 いつだって、お茶子ちゃんを見てた。

 けど、あの子の視線の先にはいつもあなたが居て。

 すっごく、すっごく悔しかった。

 「なら、僕の事は拒否しないと、駄目なんじゃないかな」
 「そう、思うなら離して……!」
 「嫌だ」

 緑谷くんの目が、私を真っ直ぐ見つめてくる。

 「千載一遇のチャンスなんだ。……絶対、僕からは離さないよ。甘井さん、分かる?」

 どうしよう。

 目も逸らせない。

 身体も動かない。

 私……これから、汚される。
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