第1章 限定って言われると欲しくなる(ホークス)
「もう、お昼だよ」
「うん……お昼ね……」
「ホークス、来るかなぁ?」
「……ヒーローって、暇なん……?」
私は机に突っ伏したまま、麻弥に尋ねた。
「繭莉、ヒーローが暇って、いい事じゃない?事件がないって事なんだからさ」
……ごもっとも……
「でも、何か言ってたよ。こっちのヒーローに呼ばれたって……」
「なぁに、ちゃっかりそんな事聞いたの?」
「……うっ……」
言葉に詰まった。
「もうさ、諦めなよ。ああいうタイプはきっと、欲しいものは絶対手に入れるまで諦めないと思うよ?手に入れた後は、どうなるか知らないけど」
亜有佳が、お弁当箱の蓋を開けながら言った。
……え……
おにいさんが?
私の事、欲しいの?
欲し……いって……
ちょっとよく、分かんない……
「私、ちょっと、お手洗い……」
考えるのが面倒臭くなった私は、もうすぐ来そうなホークスから逃げるように教室を後にした。
屋上。
どこに逃げようと思ったけど、結局ここに流れ着いてしまった。
自分のボキャブラリーの無さにちょっとイラつく。
「……はぁ……」
ふと、上を見上げるとフェンスの上に腰掛けるおにいさんが見えてしまった。
ヤバい……自ら来ちゃった。
き……気付かれてないうちに、逃げよう、そうしよう。
いつかのように回れ右をした、その時。
「あれ、帰っちゃうの?」
いつ気付かれたのか、あっけなく背後を取られてしまった。
「か、帰ります!おにいさんに、用なんかないし!」
ドアノブに手をかけようとすると、ふわりと後ろから抱きしめられて、ドキっと胸が高鳴った。
「俺は、あるんだけどなぁ」
初めて、男のひとに抱きしめられた。
どうしよう。
おにいさんの匂いと熱に包まれて、胸と息が苦しい。
「は、はなして……」
顔だけ後ろに向けると、すごく真剣な顔をしたおにいさんが、いた。
いつもの、ヘラヘラした感じなんて微塵もなかった。
自分の心臓の音がうるさくて、何も考えられない……。
「お、おにいさん、わたし、もうむり……」
こんなに心臓がドキドキしてたら、死んじゃう。
早くこの手を離して、いつもみたいにヘラヘラ笑って欲しい。
「可愛い顔して、そんな事言わないでよ」