第4章 Erode(ホークス)
そして、日も大分昇った頃。
「啓悟さん、そういえば不思議な事があったんです」
と、突然繭莉が切り出した。
「不思議な事?」
「はい……去年、仮免試験が終わった後、打ち上げしたじゃないですか」
随分と懐かしい話を……
「その次の日かなぁ……ずっと、お腹っていうか、お腹の下っていうか……痛くて」
「!」
ホークスは、固まった。
ま、まさか……
「私、何か変な物食べたっけって思ったんですけど、思い当たらなくて……啓悟さん、お腹痛くなりませんでした?」
繭莉は只管首を捻っている。
や、ヤバい。
それ、きっと俺の所為……
「いや、俺酔ってたからさ。ちょっと分かんないかな……?」
表情こそ平然を保てるが、寝込みを襲った事がバレるんじゃないかと不安になる。
バレたら一巻の終わり……な気がする……
「んー……そう……あと何か、身体がもぞもぞしたっていうか……不思議な事だらけで……」
「夢でも見たんじゃない?」
平静を装うが、もう心の中はヤバいの3文字でいっぱいだ。
「夢……そうなのかな……」
「そうでしょ、きっと」
ホント、バレたらヤバい……
墓場まで、持ってこ!
ホークスは、心に固く誓ったのだった。
その後、めでたく2人は付き合う事になった。
するとSNSなんかでは『最近ぱっきー表情エロすぎヤバい』とか『ぱっきー彼氏でも出来たんかなヤバいかわいい』とかつぶやかれるようになったのである。
「……また、立ち行かねェのか」
「……ホント、すんません……」
気付けばまた、ナガンの所に逃げ込んでいた。
結局、困った時のナガン頼みなのである。
「結局付き合ってんだろ?なら別に悩みもクソもねぇだろ」
「……いや、ぱっきーエロいとかつぶやかれると、ちょっと……」
「ンだぁ、惚気かよ。他所でやれ」
ナガンがコーヒーをカップに注ぎながら言った。
「つーか、言ったのか?寝込み襲ったって」
「……墓場まで、持っていきます……」
「だろうな。私だったら別れるな、そんな男」
……ですよね!
繭莉に一生言えない秘密が出来てしまった……取り敢えず、人に言えないような事はするもんじゃないと思うホークスだった。