第4章 Erode(ホークス)
「もぅ、だめなんら……亜寿佳、もうだめ……グスッ……彼氏にフラれちゃうし、オーディション、落ちちゃうし……もう、だめなんら……」
「あー、だいじょぶだいじょぶ、亜寿佳ちゃん」
棒で励ましながら、去年は自分がこうだったのかと思うと少しゾッとした。
「亜寿佳もぅ、生きてけない……っ、助けてぇ、ツクヨミいぃぃっ!」
「ム!」
隣の席の常闇にがばっと抱きつく亜寿佳。
あ、常闇くんにいっちゃう感じ?
やめたげて!
「こら、亜寿佳ちゃん、ツクヨミ困ってるから」
何とか引き剥がそうと、肩を掴む。
「もう、触んないでおっさん!……グスッ……亜寿佳、もう、むり……グスッ」
え、おっさん?
このコ今俺の事おっさんって言った?
確かにおっさんに片足、突っ込んでるけどさ……
それでも、改めて若い人におっさんと言われると、ちょっと傷つく。
「目良さん、このコ、早いとこ家帰らせちゃいましょう」
「そうですねぇ……しかし、何で毎年、こう酔っぱらいが生まれるのか……」
耳が痛い。
「タクシー捕まえましょう。……目良さん、運ぶの手伝って貰えます?」
亜寿佳を何とか常闇から引き剥がし、目良と2人で大通りまで運び出す。
「……これ、時間かかりそうスね」
何人かの人が、タクシーを捕まえようとしていたのでこれは意外と時間がかかるのでは……そしたら、この酔っぱらいとまだ一緒に居なきゃならんといかんのか……そう思うと、また少しゾッとした。
ふと少し先を見ると、そこでも酔っぱらいが道端に座り込んでさめざめと泣いていた。
「俺もう、生きていけない……っ……何であんな事に、なっちゃったん……グスッ」
それを、1人の女性が優しく介抱していた。
「大丈夫ですよぉ、もう、泣かないでくださいね……ほら、タクシー来ましたし、お家帰ってゆっくり休んで下さい?ね?」
酔っぱらいって、どこにでも存在するんだ……
女のコの方、大変そうだな……
そう思いながらその2人を見ていると、男性がこちらの視線に気づいたのか、顔を上げた。
「あれ?……亜寿佳、亜寿佳あぁぁ!」
「え、蓮くん!れんく~ん!」
2人はお互いに駆け寄ると、がばっと抱き合った。
「亜寿佳っ、ごめん!別れようとか言って……グスッ」
「れ、蓮くん……!」