第4章 Erode(ホークス)
向き合うとして、何にどう向き合えばいいのか。
それに、彼女はもう亡くなった相手を想い続けているのだ。
死人には、敵わない。
大体、思えば好きになる切欠なんか、どこにでも転がっていた。
だって、顔可愛いし?
スタイルいいし?
何か、優しいし?
……いや……
あの、笑顔だ。
寂しそうな笑顔の彼女を、大丈夫だよ~なんて言って抱きしめたかったのかもしれない。
だけど、最初から彼女が見ているのは彼で俺じゃ、ない。
抱きしめていい理由が、見つからなくなった。
そして、自分の心に蓋をして、仕事だったり何だったりに追われている内に2か月があっという間に過ぎていた。
「あれ?ホークスさん。お久しぶりです」
街中で偶然ぱっきーに会った。
「あ……久し、ぶり……」
何だか、勝手に気まずい。
チラリとぱっきーを見ると、黒いワンピースで、手には百合の花束。
彼女がこれから何をするのか、察しがついてしまった。
「お墓参りでも、行くの?」
「あ……そうです、ね」
何でもいいから、彼女と話がしたかった。
「こっから近いの?」
「えと……結構、遠くて」
「じゃあ、送ってってあげる。車、向こうに停めてるから。ついてきて」
そう言うと、ぱっきーはすんなりついてきてくれた。
車の中では、くだらない世間話しかしなかった。
そんな話なら、幾らでも思いついた。
1時間位車を走らせて、着いたのは見晴らしのいい墓地だった。
墓前に花を添えて、手を合わせる。
不謹慎だけど、その横顔がとても綺麗だと思った。
「今日、圭吾の命日なんです……って、圭吾って誰だって感じですよね」
また、寂しそうな笑顔で繭莉が言った。
「……ごめん、知ってる」
「……え……」
繭莉が、驚いた顔をした。
「ホントに、ごめん……でも、どうしても知りたかった、君の事」
「そ、それって……」
「俺も、啓悟っていう名前なんだ」
「!」
彼女が、少し後ずさりをした。
「圭吾って……そんな……」
「今は、いいんだ。だけど、いつか「ごめんなさい……」
ホークスの言葉を、震える声で遮った。
「私、思い出には出来ない……」
繭莉の目には、涙が溜まっていた。