第4章 Erode(ホークス)
しかし、こんな話を誰にするというのか……。
寝込みを襲いました、なんて、話せばドン引きものだ。
取り敢えず、信頼を寄せている人物をリストアップしていく。
常闇くん……いや、意外とあの子綺麗な心の持ち主だから、汚すみたいで、嫌だなぁ……
目良さんは……話したら、仕事中に色々チラつくから無理……
ああ……
結局、あの人しか、居ないじゃん……
「あの、運転手さん」
ホークスは、タクシーの運転手に行って欲しい場所を伝えた。
「何でおまえは立ち行かなくなっと私の所に来るんだ?」
「すんません、先輩……」
ここは、レディ・ナガンの部屋。
確かにホークスは今までもどうにもならない事態に遭遇すると、ナガンの所に逃げ込んでいた。
現在は出所して、趣味を楽しんでいるナガン。
今だってイラストの一つでも描こうと思っていた所だ。
そこに突然現れた後輩に、何ともあけすけな話を聞いてしまっては何とも言えない。
「せめてそういう話は男にしろ。それとも私しか聞いてくんねェとか思ったのか?」
「……残念ながら」
「ったく……」
溜息を吐きながら、コーヒーメーカーからデカンタを取るとテーブルに突っ伏したままのホークスの目の前に置かれたカップへコーヒーを注ぐ。
「で?どうすんだ?そのぱっきーとやらの事はよ」
そう言いながら、砂糖とフレッシュを2個づつ入れたナガン。
「……火伊那さん、覚えててくれたんスね」
「黙って入れられとけ。どうせブラック、飲めねェんだから。つーか名前で呼ぶな」
「……サーセン……」
「だから、どうすんだ?」
どう、と言われても正直分からない。
急に分かってしまったのだ。
自分が、彼女の上っ面しか知らない事を。
「もっと、知ったらいいんスかね?彼女の事」
「知らねぇで寝込み襲ったのか。ドン引きだな」
何も、言い返せない。
知ってる事と言えば、名前とスリーサイズ位なもんだ。
「取り敢えず、私はそのぱっきーとやらの事をまったく知らねぇ。よっと」
ナガンが、マガジンラックからタブレットを取り出した。
「ぱっきー、ぱっきー……っと」
「何か、分かりました?」
「意外と可愛い顔してんじゃねーか……ん?」
ナガンが、何かを見つけたようだ。