第3章 ナチュラルスキンシップ(爆豪勝己)
「繭莉ちゃんのお父さん、2回離婚してるんですって。きっと、前の奥さんの息子さんだと思うの」
な……
何だそれ。
だとしたら、俺相当悪ィ事、言っ……
ふと周りを見ると、女子達の視線が痛い。
爆豪お前早く謝ってこいや的なオーラを醸し出している。
集団になった女程怖いものは、ない。
「爆豪、お前甘井に謝って来い」
相澤が女子を代表するかのように言った。いや、彼、男だけども……。
「何で俺が、」
「除籍にするぞ」
相澤が凄む。
「……ンだよ、マジで!わぁったよ!行きゃぁいんだろ!」
仕方なく立ち上がった勝己は、繭莉を探すべく教室を後にした。
保健室。
そのドアの前で勝己は考えあぐねていた。
ホントにアイツ、ここに居んのか?
つうか、謝るって何だよ。小学生か。
……そうだよな……
すっげぇ傷ついた顔、してた。
あの顔見て、分かっちまった。
俺、
アイツの事……
好きなんだ。
いやでも、今日は謝るだけにしとくか。
告るのなんか、いつでも……
いつでも?
その、いつでもの間にアイツが他の男に盗られたら?
我慢ならねぇ、気が、する……
……
いい、もういいわ。
なるように、なりやがれ!
勢いでドアを開けると、繭莉が窓際に立っているのが見えた。
窓を開けて、桟に頬杖をついて外を見ていた。
繭莉の肩まで伸びた髪と、カーテンが風に揺れていた。
その横顔が、心底綺麗だと思った。
「おい」
やっとの事で声を絞り出す。
振り向いた繭莉が、寂し気に微笑んだ。
違う。
そんな顔、させたい訳じゃ、ねぇし……
「っわ……悪、かった……」
ばつが悪くなって、後頭部をがしがしとかきながら言うと、繭莉は少し驚いた顔をした。
「いや、あの……聞いた、男の事……義理の、兄ちゃんって……ややこしんだよ……」
一通り言い終えると、「別に、いいよ」とそっけなく返事をされた。
保健室に、沈黙が流れる。
もう、彼女の気を引けそうな言葉なんて、1つしか見当たらなかった。
「あのさ」
「ん?なぁに?」
「俺、お前の事、好きなんだ」