第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
「……どうかな?」
ホークスが、曖昧な言い方をした。
僕は、ホークスが羨ましかった。
確かに大事なのは心だって、あの時思った。
だけど、心は目に見えない。
僕は、いつの間にか目に見える身体の繋がりに焦がれていたのかもしれない。
その矢先に、耳に飛び込んできたホークスとの関係。
どうして、そんな……
ズルいよ、そんなの。
僕の心は、嫉妬で焼けそうになった。
ホークスが、どうしてそんな冷静でいられるのか分からないけど、僕はそういられる程大人じゃない。
「……好きなんですよね?」
もう一度、同じ質問をぶつけるとホークスは視線を左斜め下に落とした。
「……好きだよ。好きだからきっと……終わりにしたいんだと思う、あんな関係」
「繭莉も、あなたのこと好きだって言ったんですか?」
「言ってないよ。……言ってないし、俺はあの子に好きだって事すら言わせてもらえない」
「……え?」
言わせて、もらえない?
「それって……」
「緑谷くんが、抱きしめる以上させてもらえないのと一緒なんじゃないかな?」
僕は、繭莉が分からなくなった。
どうしてそんな……人を振り回すような事をするのか。
考えても考えても、分からない。
「……どうして……」
「俺も、分かんないよ。だけど、これだけは分かるんだ」
ホークスが、椅子に座り直して視線を上げた。
僕とホークスの目が、合った。
「繭莉は、どっちか選ばなきゃいけないんじゃないかな。それか、二兎を追うものは一兎も得ず……って感じ?」
僕は、目を逸らすことが出来なかった。
ホークスの言っている事が、間違いじゃなかったような気がしたからだと思う。
「……出よっか」
そう言ってホークスが席から立った。
「……はい」
僕は、これは現実なんだろうかと訳の分からない事を思いながら席を立った。
ホークスと話せてよかったのかそれとも悪かったのかは、分からない。
だって、話さなければこんな嫉妬に狂う事もなかったんだから。
「じゃ、またね緑谷くん」
繭莉と、どんな顔をして会えばいいんだろう。
そればかりを考えながら、僕は夜の街に溶け込んでいくホークスの後ろ姿を見ていた。