第15章 本当はね(ホークス)
「その1回を担当してくれたのが、甘井さんで」
そう話す上村さんの顔は少し赤くなっていた。
「また会えて、嬉しいです。マジで」
「……はぁ……」
ヤベぇ。
全っっ然、覚えてない!
申し訳ないな……でも1回しか来てないお客さんの事まで覚えてない……って、言い訳にならないか……
「すみません、覚えてなくって……」
私が素直に謝ると、上村さんは眩しい位のイケメンスマイルで言った。
「いや、いいんです!甘井さんが元気になって退院するまで、お手伝いさせてください!」
「あの……よろしく、お願いします」
ぺこりとお辞儀をして、自分の病室に戻ろうと上村さんに背を向けようとした。
「甘井さん」
名前を呼ばれて、上村さんの方を見ると彼はさっきまで少しだけ赤くしていた顔を真っ赤に染めていた。
「あの、僕……あの時、から……」
「?」
なんとも歯切れの悪い言い方に首を傾げると、後ろから「甘井さん」と呼ばれて咄嗟にそちらに振り向いた。
「もうっ、やっと見つけましたよ!病室戻って下さい、点滴の準備始めますから」
「は、すみません!上村さん、また……」
私は、まだ何か言いたげだった上村さんに軽くお辞儀をすると自分の病室に向かって歩き出した。
入院初夜。
「……ん……」
私は、なかなか寝付けないでいた。
腕に常時纏わりつく点滴の重たさと、皆の気持ちよさそうな寝息。
皆寝てるし早く寝なきゃと思う程、目がどんどん冴えていく。
……もう、今日は寝るの諦めるかぁ……
誰も起こさないようにベッドから降りて、そっとカーテンを開ける。
規則的な3つの寝息が崩れる事はなかった。
私は、点滴スタンドを連れて静かに病室を後にした。
消灯時間を過ぎた病棟は、ちょっと暗めでなんだか怖い。
なんとなくスタッフステーションを避けて、デイルームに入るとそこには先客がいた。
「……ぁ……」
昼間見た、ホークス似の個室のお兄さんが窓を開けて桟に頬杖をついていた。
夜空でも、見てんのかな?
っつーか個室なんだから自分の部屋で見りゃいいじゃん。
……ま、いっか。見たい気分なんでしょ。
「お兄さんも、眠れないんですか?」
点滴スタンドをコロコロ転がして、お兄さんの隣に立ってみる。
「……鷹見です」
お兄さんは、夜空に視線を向けたまま言った。