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The usual one【ヒロアカ中心】

第2章 ゆめのプロポーズ(轟焦凍)


 そんな事を考えていた、ある日の日曜日。

 私は、お客さんに急な呼び出しを受けた。

 ああ……行かなきゃな。

 そう思って準備を始めた。

 「繭莉、どこ行くんだ?」

 ソファに腰掛けていた焦凍が言った。

 「ん、ちょっと常連さんに呼ばれちゃって……ごめんね、今日日曜日なのに……」

 私が口紅を塗りながら言うと、焦凍が後ろから抱きついてきた。

 ちょっとしたヤキモチか何かだと思って、優しく窘めようと思った。

 「焦凍、夜までには戻るから。待ってて」
 「繭莉、こっち向いてくんねぇか」

 そう言われて振り向くと、いつもと違う焦凍がいた。

 「あのさ、」
 「ん?なぁに?」

 「……その仕事、辞めてくれ」

 告白された時と同じ位、吃驚した。

 もしかしたら、言うのは今なんじゃない?

 焦凍を手放すタイミングは、今なんじゃないかと思った。

 「……なんで、いきなりそんな事言うの?」
 「俺、繭莉がどんな仕事してようが関係ねぇって、思ってた。けど……」

 焦凍が、自分の髪をくしゃりと掴んだ。

 「他の男に触られんだろ?……考えただけでもう、耐えらんねぇよ」

 焦凍は、ひどく疲れた顔をしてた。

 今だ。
 
 今、言わないと。

 「しょうがないでしょ、仕事だもん。辞めたらご飯食べらんなくなっちゃうし」
 「いいだろ、そんなの。辞めたって俺がいつか」
 「やめてよ、くだらない!」

 焦凍の言葉を、大声で無理矢理遮った。

 「何言ってンの?大体、学校も碌に行かなくなった子供が、ヒーローになるって?私を養うって?馬鹿じゃない!?焦凍あのね、生きていくっておままごとじゃないの!綺麗事ばっかり、言わないで!」

 私がそう言った時の焦凍の傷ついた顔が、今でも忘れられない。

 私は、震えそうになる声を必死で張った。

 「だから、仕事辞める気、ない!……ごめん、私が戻って来るまでに、ここ出てって」
 
 焦凍、あなたは私とは違う。

 あなたは、お日様の下でキラキラ笑ってる方が似合ってる。

 それでいつか、ヒーローになって、誰か違う人と恋に落ちて欲しい。

 いつか、どこかの誰かを抱いて笑う焦凍を、遠くから見るだけでもう、十分。
 
 だから、こんな部屋から出て行って。

 「な、んだよ、それ……」
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