第2章 ゆめのプロポーズ(轟焦凍)
焦凍からつらつらとその話を聞いた時、似てる訳でも何でもないけれど共感してしまった。
焦凍も苦しんでいたのかと思うと、何だか、同じ人間になれた気がした。
そんな事情があったから、私の事もすんなり受け入れてくれたんだろうか。
そう思うと嬉しかった。
だから、最初のうちは気にも留めなかった。
焦凍が、私の部屋にいる日が多くなっていた事を。
雄英の全寮制が緩和されて暫くしてから、焦凍が学校へ行く日が少なくなった。
つまらない保護欲が働いた。
「いじめにでも遭ってる?」
「嫌な事でもあった?」
何を聞いても、焦凍は首を横に振るばかりだった。
「ただ、繭莉と一緒に居てぇだけだ」
その、一点張りだった。
そんな事が続いたある日。
「あ、あの!」
日課で公園を歩いていると後ろから声を掛けられた。
このコ、どこかで見た気がする。
「あの、僕、轟くんの友達の緑谷出久といいます」
と、ペコリとお辞儀をした。
ああ……緑谷君。
彼の話は焦凍から聞いていた。
「私に、何か……」
すると緑谷君は、リュックからまぁまぁな量のプリントを取り出して私に寄越した。
「今、轟くんの家に行こうと思ってたんです。プリントとか、結構溜まっちゃってたので……そしたら、あなたの姿が見えたから。……あ、あなたの事は、轟くんから聞いててっ……」
このコ、いいコね。
私はプリントを受け取ると、営業スマイルを作った。
「わざわざありがとう。渡しておきます。焦凍にも、学校に行くように言っておくから」
すると、緑谷君はとても浮かない顔で俯いた。
「僕、轟くんの事が、心配です……」
はっとした。
何を言えばいいのか、言葉を探したけど見つからなかった。
僕 轟くんの事が 心配です
その言葉が、いつまで経っても消えなかった。
そして、ある一つの結論に辿り着いてしまった。
私が、焦凍の輝かしい未来を、汚した。
ヒーローになりたいと、生き生きした顔をしていた焦凍の笑顔を最近見ていなかったと気づいた。
私がこんな部屋に焦凍を連れ込んだから、こんな事になったんだ。
全部、私の所為だ。
私は焦凍を手放さなければと、思った。