第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
好き……
私は、自分に都合のいい夢を見ているんじゃないかと思った。
「……ゆめ……?」
瞬きでもしたら、次の瞬間にはこの温もりも何もかも消えて無くなるんじゃないかと疑った。
「夢じゃない」
相澤さんの声が聞こえて、私はゆっくり瞬きをした後に視線を上に向けた。
「……あ……」
夢じゃなかった。
視線の先の相澤さんは優しく微笑んでいて、身体を包む温もりも消えなかった。
好きだという言葉も、何もかも……全部全部、現実だった。
止まっていた涙が、また勝手に目から零れた。
「相澤さん……ごめんなさい、私……っ……好きです……」
涙声で、私は言葉を絞り出した。
相澤さんは、そんな私の頬に触れて親指でそっと涙を拭ってくれた。
「一瞬ビビった……ごめんなさいって言うから、もう好きじゃないとか言われるのかと思った」
「……ごめん、なさい……」
「繭莉、初めて喋った時からずっと謝ってる」
うぅっ……
確かに、それは仰る通り……
「いや……謝るのは俺の方か」
え?
なんか、謝られるような事……あったっけ……?
「君が、あまりにも大人っぽいから……初めて会った時からずっと、二十歳位だと勝手に思ってた」
あ……やっぱり私、老けてる……?
「勝手にそう、思ってた所為であんな事をして……すまなかったと、思ってる」
あんな事……
そう言われて、私はあの日の事を思い出して顔が少し熱くなった。
「……」
相澤さんが急に黙り込んでしまったので、どうしたのかと思っていると、急に私の身体に回していた腕を解いて背を向けた。
「あ、相澤さん?」
「……帰る」
……え……
今相澤さんが帰ってしまったら、もう次どこでどう会えるか全く謎になってしまう。
折角、好きって言って貰えて好きって言えたのに……
帰って欲しくない。
そう思った時には既に、私の手は彼のシャツの裾をはしっと掴んでいた。
「か、帰らないで……!」
その言葉に振り返った相澤さんは、とても驚いた顔をしていた。
「ごめんなさい、けど、私……!」
その先が、言えなかった。
相澤さんに、キスされていたから。
こんな時、目を閉じなきゃいけないんだけど、吃驚しすぎて目を見開いてしまった。