第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
「え?」
相澤さん?
私の胸は、ドキンと高鳴った。
「繭莉が東京行ってからかな、たまーに買い物来てくれてたんだよ。それで、ちょいちょい話したっていうか」
「そう、なんだ……」
昔の事を思い出して、顔が少し熱くなる。
「教師してたんだね、相澤さんって」
「う、うん」
紗綾はスマホから目を離して私をじっと見つめた。
「だから、私の所為だって言ってたのね?私に言わないなんて、水臭い」
「ごめん……」
私が謝ると、「いいよ!」と紗綾は笑った。
「もうさ、お互い大人になったんだからいいんじゃない?……繭莉が、あの人の事忘れてなければだけど」
確かに、忘れられなかった。
東京で、忙しなく日々を過ごしていてもふと相澤さんの事を思い出すと、何だか胸が温かくなる気がしていた。
私は、成人になった。
なら……紗綾の言う通り、いいんだろうか。
相澤さんの想いを、聞いても。
……まぁ、何かの偶然で会えればなんだけども。
「でもさぁ、そんな今日明日会えるとか、そんな奇跡みたいな事……「あ!」
私の言葉を遮った紗綾が、驚いた顔をした。
「どうしたの?」
不思議に思って、私は後ろを振り向いた。
「……あ……」
そこには、相澤さんが立っていた。
吃驚して立ち尽くす私の方へ、歩いてくる。
でも、何だか歩き方が普通なんだけど普通じゃないように見えた。
髪も、まるで片目を隠すように伸ばしていた。
何か、あったのかと直感で思ってしまった。
「あ、あの!」
私は、少し震える声を振り絞った。
「何か、あったんですか?」
「ちょっと、ダンプカーに轢かれた」
……えっ……
大事故じゃん……!
「だ、大丈夫なんですか……?」
本格的に震えた私の声を聞いて、相澤さんは頭の後ろをがしがしと掻いた。
「いや、すまない。……冗談」
じょ、冗談……?
そんな事、言う人だったっけ……?
「でもまぁ、大怪我したのは事実だよ。右足義足で、右目もない」
淡々と事実を語る相澤さんの元へ、気付けば駆け寄っていた。
「ど、どうしてそんな大怪我……!」
相澤さんは、そんな私の両肩をふんわりと掴んだ。
「……捕まえた」
「……へ……?」
予期しない言葉に、変な声が出た。