第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
それは、どちらかというと悪い方に。
まるで、してはいけない事をしてしまった人の、やってしまったという表情だった。
「そう、ですか……てっきり……」
「あの……?」
どうしたんだろうかと思っていると、「いくらですか?」と金額を催促されて、慌てて商品をスキャンした。
「1870円に、なります」
そう言うと、ぴったり1870円を渡される。
「甘井さん」
「はい?」
相澤さんが、あの日の夜みたいに、少し切なそうな顔をした。
「俺、高校教師なんだ」
え…………
「君は馬鹿じゃなさそうだ。……これだけ言えば、分かるよな?」
あ…………
残念な事に、分かってしまった。
私は、高校に入学したばかりでまだ15歳だ。
いくら他校の生徒でも、高校生と教師がどうにかなるなんてとんでもない事だ。
だから……
「忘れてくれないか、何もかも」
理解はしているのに、やっぱり本人の口から言われると……正直キツイ。
けど、仕方ない。
「……はい」
私は、物分かりのいい女の振りをして頷いた。
「仕方ないですよ、何も知らなかったんですから。誰にも言いませんし、安心してください……はい、お品物です」
相澤さんは、笑顔の私とは対照的に、少し思いつめた顔をして袋を受け取った。
そんな顔、して欲しくなかった。
だって、相澤さんは私が高校生ってホントに知らなかったんだもん……しょうがないじゃない。
「またのお越しをお待ちしています」
笑顔のままで頭を下げると、相澤さんは何かを言おうと口を開いた。
「…………いや、」
きっと、言おうとした言葉を飲み込んで、彼は店を出て行った。
「繭莉、何話してたの?なんかめっちゃ……」
紗綾が私のもとに駆け寄りながらそこまで言って、ギョッとした。
「紗綾……」
「え、繭莉!?え、え!?」
私は、いつの間にか泣いていたみたいだ。
紗綾がおろおろしながら、私の肩をさすった。
「繭莉~!何があったのぉ!泣かないで~……!」
「……フラ、れた……」
「フラっ……!?アイツ……繭莉の魅力が分からんなんて、見込み無しだな!あんなくたびれ男なんて、忘れよ!ね?」
「ちがうの、紗綾……」
「……え?」