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たまのケージ【ヒロアカ】

第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)


 いつもの真っ黒な服を着た相澤さんを、玄関まで見送る。

 「あの、お気を付けて……」
 「……どうも」

 相澤さんの指が、私の唇に触れた。

 「……俺……」
 「?」

 相澤さんが何を言おうとしているのかイマイチ分からなくて私は首を傾げた。

 けれど、その少し切なそうな表情に胸がキュッとなる。

 「……いや、」
 「相澤さん……?」
 「何でもない……忘れて下さい」

 忘れるって……

 どこまでを、忘れればいい?

 抱きしめられた事も、キスされた事も、全部忘れなきゃ、ダメなの?

 そう思う私に背を向けて、相澤さんは「じゃあ」と言ってドアを開けて出て行ってしまった。

 
 リビングに戻って、空になったお皿を手に取りながら考える。

 私達、どうなってしまうんだろう。
 
 少なくとも、私は今日の事を無かった事になんて出来ない。
 けど、相澤さんは出来るんだろうか?

 ……大人、だもんね……きっと、出来るんだ。


 やっぱり、あれは気の迷いだったんだ。

 
 そう思うと、胸の奥が苦しくなって、勝手に目から涙が零れだした。

 「……っう……」

 私は、情けない事にその場に座り込んで暫く泣いてしまった。




 二週間後。

 丁度、中間テストがあったのでバイトに来るのが久しぶりだった。

 レジ周りの備品を補充しながら、考える。

 相澤さんに会ったら、どんな顔をすればいいんだろう?

 なるべく、何も無かったように振る舞わないといけない?

 ……うん、そうだよね、忘れろって、そういう事だよね……

 そう、自分の中で纏めた所で自動ドアの開く音が聞こえた。

 お店に入ってきたのは、相澤さんだった。

 「いらっしゃいませー……あ、」
 入り口付近の栄養ドリンクを補充していた紗綾が私の方を見て、にっと笑った。

 ちょっ、今はこっち見ないで……

 相澤さんは、いつも通り例のものをカゴに入れていた。

 「いらっしゃいませ、商品お預かりしますね」
 「あの、」
 「はい?」
 「体調でも、悪かったんですか」

 そう聞かれて、暫く居なかったからかなと思った。

 「あ、いえ。学校で中間テスト、あったので」
 「学校、テスト……?」
 「あ、はい……私、そこの女子高、通ってるんですけど」
 私がそう言うと、相澤さんの表情が変わっていった。
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