第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
「え、なんで……?」
急に名前を呼ばれてドキドキと疑問が交錯していると、お兄さんは私の胸元を指差した。
「名札」
あ!
そっか、名札ね……付けてた……
私がそんな事を思っていると、「じゃあ」と言ってお兄さんはレジの方へ歩いて行ってしまった。
名札を付けてるとはいえ、名前を覚えてもらえて嬉しい。
私は、そういえば陳列作業の途中だった事を思い出してその場に座り直した。
20分後。
私が陳列作業を全て終えてバックヤードに行くと、紗綾が「繭莉、繭莉!」と私に飛びついて来た。
「え!な、なに?紗綾」
「いい事、教えよっか」
……いい、事……?
「あの人の名前、相澤っていうらしいよ」
「紗綾、なんで知ってるの?」
そう聞くと、紗綾は私の肩に腕を回した。
「さっきねぇ、あの人の友達なのかな?みたいな人が来てさぁ、相澤~!って呼んでたからきっと相澤だよ」
「そ、そうなんだ……」
あいざわさん。
って、いうんだ……
「よかったねぇ繭莉、名前知れて」
「……う、うん……?」
「あっ、そこ!なに遊んでるの!?早く閉店作業しちゃって!」
偶々来ていた店長にチクリと言われて、私達は慌てて閉店作業をする為に店内へと戻った。
次の日の夜。
家に帰っていた私は、夕飯の支度をしていた。
幼い頃両親が離婚して、歳の離れた兄と2人暮らしだったので必然的に私がご飯の支度をする事になっていた。
……お兄ちゃん、帰って来ないなぁ……残業?
そんな事を思いながら鍋の落し蓋を取ると、ふんわりといい匂いが鼻孔をつく。
うん、もういっか。
コンロの火を止めると、丁度いいタイミングで窓際の棚の上に置いてあったスマホが鳴った。
「もしもし、お兄ちゃん?」
『ああ、繭莉ごめん!今日家帰んの遅くなる!』
「そうなの?何時くらい?」
『きっと終電になるかな』
えっ……そんな遅くまで……
「ご飯、作っちゃった……」
『いや、ホントごめん!急な案件が入っちゃって』
「……分かった、雨降ってるから、気を付けて帰ってきてね」
そう言って、通話を切りながら窓の外を見ると傘も差さずに走っている人が目に入った。
あれ……?
あっ、相澤さん……?