第11章 スターと恋(轟焦凍)
繭莉には会いたいけれど、怪しい奴にはなりたくない。
どうすりゃ、いいんだ……
そうは思っても、取り敢えず彼女がここから出てきてくれるのを怪しい奴にならないように待つしかない……相当難しいが。
何だか無理難題を押し付けられた気分になって、気持ちが竦んでしまう。
一回、駅に戻……
そう思った時だった。
「焦凍……くん……?」
後ろから声が聞こえて、振り返るとそこには繭莉がいた。
「繭莉……!」
思わず彼女の元へ駆け寄ると、隣に居たマネージャーと思しき男が「あっ!」と声を上げた。
「これ以上寄らないで!」
そう言われて、ビクっと身体が固まる。
「キミ、なに!?繭莉、まさかとは思うけど彼氏とか言わんでよ!?」
「……さっき言った、好きなひと」
繭莉の言葉に、自惚れじゃなくてよかったと思うとほっとして力が抜けそうになった。
しかし、マネージャーは焦凍とは対照的に絶望的な表情をしていた。
「ちょっと!倫音と別れさせんのも大変だったのにどういう事!?ちょっとは売れてるって事、自覚して!」
「……いい……」
「は!?なに!?」
「いいです!」
繭莉が大きな声を出したので、彼は吃驚したらしく押し黙った。
「私、焦凍くんが好き!それをやめる位なら、もう売れなくたっていい!」
そう言うと、繭莉は棒立ちになっていた焦凍の胸に飛び込んできた。
「焦凍くん……会いたかった……」
「繭莉……」
思わず彼女を抱きしめると、マネージャーが頭を抱えた。
「あーもう!俺、どうなっても知らんよ!?」
「焦凍くんと離れる位なら、どうなっても、いい……」
どうなっても……って……
繭莉にそんな思いをさせるなんて、申し訳ないと焦凍は思ってしまった。
「ごめん、繭莉」
「なんで、焦凍くんが謝るの?」
「ごめん……けど、離したくねぇ」
ぎゅっと、抱きしめる腕に力を入れた。
その様子を見ていたマネージャーは、根負けしたのか大きな溜息を吐いた。
「分かったよ……もう、しょうがないなぁ……取り敢えず、家帰ろ?」
家って……誰の家……?
この状況だと、行きつきそうな家は1つしか浮かばなかった。