第11章 スターと恋(轟焦凍)
それだけで、早鐘を打っていた心臓は、更にドクドクと苦しい程鼓動を速めていく。
もう、正直その後はテレビの内容が頭に何一つ入って来なかった。
繭莉に、会いたくなっていた。
会って、抱きしめて、匂いも温もりも何もかもを感じたい。
『そう言えば繭莉さん、今日お誕生日ですね!』
MCの言葉で焦凍ははっと我に返った。
え、誕生日?
『この後、何か予定あるんですか?』
『いえ、それが無いんですよ~』
そうだった!今日、繭莉の誕生日だった!
以前に話した時の事をやっと思い出した。
『じゃあ、欲しいものとか無いんですか?』
『えっと……』
繭莉が、一瞬俯いた後、顔を上げた。
『ものっていうか……言葉が、欲しいです』
『へぇ、どんな?』
『好きって……言葉です……私の事信じて、欲しいっていうか……』
その意外だったらしい答えに、MCが色めき立った。
『ええ!?どなたに言って欲しいんですかぁ?』
『それは……好きなひとです』
それは、誰に言ってる?
俺?俺なのか?
自惚れてもいいんだろうかと思ってしまう。
けど、自惚れたかった。
好きだと伝えたかった。
焦凍はテレビを観るのもそこで止めて急いで自室に行くと、上着を羽織り、最小限の荷物を持って玄関へ走った。
「あれ?焦凍!夕飯は!?」
「ごめん!後で食うから!」
焦凍はそれだけ言うと、家を飛び出した。
はやる気持ちで電車を乗り継ぎ、繭莉が居るであろうテレビ局のある最寄りの駅に着いた。
しかし、ここからテレビ局まで結構距離もあるし、繭莉は暫く外には出てこないだろう。
焦凍は、気を落ち着かせてゆっくり歩いて行こうと思い、歩き始めた。
歩きながら、考える。
思えば、そうだ。
他人との事に惑わされて上手く信じらんねぇなんて、変な話だった。
俺が繭莉を好きだってだけで、よかったんだ。
そうだ、それでいい。
暫く歩いていると、テレビ局に着いてしまった。
空を見上げると、とっぷりと日は落ちて夜に差し掛かっていた。
まだ、出て来ねぇよな……
関係者の出入り口で待つのも気が引ける。
そんな所で待っていたら、怪しい奴だ。