第11章 スターと恋(轟焦凍)
自分がイケメンかどうかはさておき、焦凍はあの日の繭莉の言葉を思い出した。
『……やっぱり簡単な女だよね……私って』
やっぱりって……好きになるタイプが似てるからって事なのか?
「……アンタ達、別れたんじゃねぇのかよ」
思わず棘のある言い方をしてしまったが、倫音は気にも留めない様子だった。
「ああ……うん、そうだね。あれ以上噂になっても困るし。2人とも、業界のメインストリームにいるって自覚が足んなかったのかもね」
そこまで言って、倫音は溜息を吐いた。
「……っていうのは、俺達を売りに出したい大人達の事情かな」
繭莉と倫音は、どうやら業界の大人の事情とやらで別れざるを得なくなったようだ。
もしかして……こいつ……!
「大人の事情なんか抜きにしたら、俺は繭莉と付き合っていたかったんだ。……まぁ、無理なんだけど」
やっぱ、そうかよ。
繭莉はどうだか分からないが、どうやら倫音はまだ彼女の事が好きなようだった。
もし、この事実を繭莉が知ったら……?
そう思った時だった。
繭莉の部屋のドアがガチャっと開いた。
「え……なに……?」
丁度出かけようと思ってドアを開けたらこの状況だったらしい。
彼女はとても驚いた様子で焦凍と倫音を交互に見た。
「な、なんで……え……え?」
「繭莉、久しぶり」
倫音は、大抵の女は落ちそうな爽やかイケメンスマイルで言った。
「お前の部屋にある俺の荷物、捨ててなければ持って来てくれる?」
「……うん、ちょっと……待ってて」
戸惑いながら、部屋の中へと入り直す繭莉。
それを確認した所で、焦凍は倫音に向き直った。
「……繭莉は、俺のだ」
つまらない嫉妬心から、焦凍はついそんな事を口走っていた。
口から出まかせと言われれば、そうかもしれない。
「今はもう、そうなんだろうね」
倫音は、焦凍の言葉を笑顔で受け流した。
その笑顔が、焦凍の焦燥感を煽った。
暫く無言で向き合うというか、睨み合うというか……そんな事をしている内に、繭莉が玄関先に戻って来た。
その手には、紙袋の中に纏めたと思しき荷物があった。